ST088 ボブ・マーリー
Small Treasure
Painting size 16cm x 23cm
Framing size 37cm x 47cm
僕は、あまり人物画、ポートレートと呼ばれるものを描かないのだが、描く時には、本当に描いてみたいと思う人しか描けない。
その描きたいと思うモデルの殆どが、音楽をやっている人達なのだ。絵を描いている時には、何時も音楽を聴いていて、絵と音楽が切り離せない関係になっているからかもしれないが、音楽の枠組みを超えて、何かを表現する人を描いてみたくなるのだ。
その何かとは、生きる事、生きている事に繋がっている。
ポートレートの必須条件であるかもしれない本人に似ている事に、僕はあまり執着していない。モデルをスタート地点にして、後は、絵自体が何を捉えるのか見てみたいからだ。
だから似せて描く努力もしないし、必然的に似ていない。
ところが、このオイルパステルでざざっと描いたボブ・マリーの絵、似ていると言うか、ボブそのものなのだ。歌っている時、歌っていない時のボブ・マリーを捉えている。
ボブ・マリーは、アメリカでも無くヨーロッパでも無い第三世界から出て、世界的になった初めてのミュージシャンだと思う。
ボブの歌声は、魂を抱え込んでいる。これからもずっと聴き続かれるだろう。
このボブ・マリーの絵をフレーミングをお任せしている川崎貴代美氏に見せると、ボブを知らないと言う。
僕はいささかと言うか、かなり吃驚してしまった。
この世の中にボブ・マリーを知らない人が居たのかと。
でも冷静に考えてみれば、僕はテレビを全く見ないので、世間でよく知られている有名人を知らない事も多いし、その道では知らない人が居ない人の事も、その道に興味がないと知らないのである。
同じ事だと思い直したのである。
そして、「レゲエのカラーは、赤と黄色と緑なんですけど」とポツリと言った。ふと、そんなマットでフレーミングしたら面白いだろうなと思ったのだ。
するとその場に居た助手の女性の方が「絵を描かれたキヨシさんが、マットを選ばれた方が良いのでは」と呟いたのである。
貴代美氏は、ボブ・マリーの絵をじっと見つめ「私がやります」と宣言した。
出来上がったのが、このフレーミングだ。
普通なら、赤、黄色、緑のマットを同じ幅で絵の周りにぐるりと配置すれば、それで完成なのだが、貴代美氏は、黒を抑えに持ってきて、赤のマットの上部を広く取ったのだ。
これで絵が額の中に納まるのではなく、ボブの魂がこちらに向かって飛び出してくる形になったのだ。
自画自賛すれば、絵も傑作だが、フレーミングも傑作だ。
因みに、貴代美氏は紙を切ってマットに貼り付けたそうだ。



